離職証明書とは?
◆離職証明書とは、退職が決まった社員が失業給付(雇用保険の基本手当)を受けるために必要な「離職票」を請求できるようにするために事業主が交付する書類です。正式名称は「雇用保険被保険者離職証明書」といい、3枚複写の書類で構成されています。
- 1枚目:事業主控え
- 2枚目:ハローワーク提出用
- 3枚目:「雇用保険被保険者離職票-2」(退職者交付用)
離職証明書と離職票の違い
◆離職証明書と離職票は混同されがちですが、異なる書類です。
離職証明書 | 離職票 |
---|---|
会社が作成する書類 | ハローワークが発行する書類 |
退職者の情報や離職理由を証明 | 失業給付を受けるための資格を証明 |
3枚複写(事業主控え、ハローワーク提出用、退職者交付用) | 「離職票-1」と「離職票-2」の2種類 |
ハローワークに提出するための書類 | 退職者が受け取り、失業給付申請に使用 |
離職票発行の流れ(2025年最新情報)
◆会社は離職証明書に必要事項を記入します。この際、退職理由が正確に記載されることが重要です。退職者も内容を確認し、一部の箇所に署名します。
◆会社は「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」をハローワークに提出します。提出期限は退職日の翌日から10日以内です。
◆ハローワークは提出された書類をもとに、「雇用保険被保険者離職票-1」と処理済みの「雇用保険被保険者離職票-2」を発行します。
◆通常の方式では、ハローワークから離職票が会社に返送され、会社はそれを退職者に郵送します。この方法では、手続き完了から離職票受取まで1〜2週間程度かかることがあります。
◆2025年1月20日より、マイナポータルを通じて離職票を直接受け取ることが可能になりました。この方法を選択すると、ハローワークでの処理完了後すぐに離職票を受け取ることができ、手続きが大幅に迅速化されます。
離職証明書のイメージ

離職証明書の重要ポイント
◆離職証明書に記載される退職理由は、失業給付の支給時期や給付日数に大きく影響します。特に注意すべきは以下の点です:
退職理由による給付開始時期の違い
離職理由によって、給付の開始時期が大きく異なります:
離職理由 | 給付開始時期 詳しくは雇用保険受給資格者証をご覧ください |
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会社都合の退職(解雇など) | 7日間の待機期間後、すぐに給付開始 |
正当な理由のある自己都合退職 | 7日間の待機期間後、すぐに給付開始 |
正当な理由のない自己都合退職 | 7日間の待機期間後、さらに3ヶ月の給付制限期間あり |
給付制限のない「正当な理由のある自己都合退職」の例(2025年最新)
- 事業所の廃止や移転により、通勤が困難になった場合
- 大規模な人員整理(1ヶ月に30人以上または全従業員の1/3超の離職)が行われた場合
- 労働条件が求人票や労働契約と著しく異なっていた場合
- パワーハラスメントや長時間労働による健康上の理由での退職(医師の診断書等が必要)
- 親族の介護のために退職せざるを得なかった場合
- 出産、育児、結婚による転居で通勤が困難になった場合
- 期間の定めのある労働契約が更新されなかった場合
※2024年の雇用保険法改正により、「正当な理由のある自己都合退職」の範囲が拡大されています。条件に該当すると思われる場合は、ハローワークに相談することをおすすめします。
離職証明書の記入における注意点
◆離職証明書に記入する退職理由に対し、企業から自己都合退社として記入するよう勧められることがあります。これには以下のような背景が考えられます:
- 会社都合での退職の場合、企業は解雇予告通知書の発行や退職金の割増支払いが必要になる場合がある
- 会社都合での退職が多い企業は、助成金申請の制限やハローワークでの求人公開に影響が出る可能性がある
◆また、「解雇」と記載されると再就職が困難になるという誤った情報を伝えられることもありますが、懲戒解雇以外の普通解雇では再就職に大きな影響はありません。自分の状況に応じた正確な離職理由が記載されるよう注意しましょう。
マイナポータルでの離職票受取(2025年最新情報)
◆2025年1月20日より、離職票をマイナポータルで直接受け取ることができるようになりました。これにより、以下のメリットがあります:
- 離職票の受取までの時間が大幅に短縮される
- 郵送トラブル(紛失・遅延など)のリスクがなくなる
- いつでもマイナポータル上で離職票を確認できる
- ペーパーレス化による環境負荷の軽減
◆マイナポータルでの受取を希望する場合は、退職時に会社に希望する旨を伝える必要があります。また、この仕組みを利用するには、マイナンバーカードとマイナポータルへの登録が必要です。
離職票が届かない場合の対処法
◆退職後10日以上経っても離職票が届かない場合は、以下の順序で対応しましょう:
- 元の勤務先に連絡し、状況を確認する
- 会社が手続きを行っているか確認する
- 会社が手続きを行っていない場合は、早急に対応するよう依頼する
- 会社から回答がない、または対応してもらえない場合は、管轄のハローワークに相談する
◆事業主には離職者が離職票を請求するための離職証明書の交付義務があります。手続きが遅れると失業給付の受給が遅れるため、速やかな対応が重要です。
よくある質問
- 離職証明書の記入内容に納得できない場合はどうすればよいですか?
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まずは会社に対して、内容の修正を求めてください。それでも解決しない場合は、ハローワークに相談しましょう。離職理由について異議がある場合、ハローワークで事情を説明し、調査を依頼することができます。その際、あなたの主張を裏付ける資料(メールのやり取りなど)があれば、用意しておくとよいでしょう。
- 離職票をマイナポータルで受け取るための条件は何ですか?
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マイナポータルで離職票を受け取るには、以下の条件を満たす必要があります:
- マイナンバーカードを持っていること
- マイナポータルにログインできること(利用者証明用電子証明書のパスワードが必要)
- 退職時に会社に対してマイナポータルでの受取を希望する旨を伝えていること
これらの条件を満たしていれば、2025年1月20日以降に手続きされる離職票から、マイナポータルでの受取が可能です。
- 転職先が決まっている場合でも離職証明書は必要ですか?
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転職先が決まっていて失業給付を受け取る予定がない場合は、離職証明書や離職票は必要ありません。ただし、万が一に備えて発行しておくことをおすすめします。離職票の申請期限は退職日から1年間ですので、後から必要になった場合でも請求できます。なお、転職先の手続きには雇用保険被保険者証が必要になることがありますので、それは必ず受け取っておきましょう。
- 会社が離職証明書を発行してくれない場合はどうすればよいですか?
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会社が離職証明書を発行しない場合は、まず書面で正式に依頼してみましょう。それでも対応がない場合は、管轄のハローワークに相談してください。事業主には離職証明書の交付義務があるため、ハローワークから会社に対して指導が入ることがあります。どうしても会社と連絡が取れない場合は、ハローワークで「事業主の証明を得られない場合の申立書」の手続きを行うことも可能です。